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『TCL QM8B』レビュー。これぞ全部入り?ゲーミングテレビの実力とは

2024年7月24日

『TCL 50QM8B』レビュー!

テレビといえばPC用モニターよりも概ね巨大なサイズである事が没入感を重視する上では魅力の1つです。

ひと昔前ならば「PCモニターとしては不向きな性能」が当たり前でしたが、
近年のテレビはPS5の120hzやそれ以上に対応したりAMD Freesyncを備えるなどゲーム機やPCでの運用を強く意識した製品も増えているようです。

その中でも私が調べた限り、欲しい機能が一通り揃ったTCLのAmazon限定モデル「QM8B」は他に同じだけの機能を持ちあわせた同価格帯の競合が存在しない、言うなれば「現状これしかない」モデルであると確信。

というわけで噂のゲーミングテレビはどうなのか?
そもそもテレビをモニター代わりに導入するメリット・デメリットは?
実際にTCL 50QM8Bを自腹購入してその良し悪しを体感してみる事にしました。

 

※この記事にはプロモーションが含まれています。

TCL QM8B

TCLのQM8Bシリーズは(少なくとも日本では)Amazon限定モデルとなっています。

最小の50インチとそれ以上の55~85インチモデルとで販売ページが分かれているので少し紛らわしいです。
55インチのページのみを見て55インチが最小モデルであると勘違いしないようにご注意を。

 

TCLの公式サイトは日本語版も存在しますが、QM8Bの公式ページは英語サイトのみです。

全部入りたる所以

個人的に「これぞPC向けゲーミングテレビの全部入り!」と感じた
TCL QM8Bのモニターとしての特徴・機能をざっと並べます。

QM8Bの特徴

  • 4K(3840×2160)解像度
  • リフレッシュレート最大144hzのVRR対応
  • 量子ドット VAパネル
  • Mini LEDバックライト
  • システム輝度 (cd/m2) 600 nits (標準)、1300 nits (ピーク) ※公称値
  • AMD FreeSync Premium Pro対応
  • これだけ盛って価格が10万円前後

まず量子ドットMini LEDという時点でPCモニターも含めて現在これを満たす機種はそこそこ限定されます。

同価格帯の競合製品としてハイセンスのU8Kがよく比較されています。
テレビとしての基本的な性能比較ではU8Kが優位な部分もあるようですが、あちらはリフレッシュレートが120hzまで。
AMD FreeSyncもPremiumまででProが付かないので「PCモニターとして」はQM8Bに分があると考えます。

国内メーカーで同程度の機能を求めると価格が倍増するので比較にならない場合がほとんどです。
(倍増してなお120hzまでだったりFreeSyncにProが付かなかったりします)

HDRの明るさに関わる輝度を具体的に書かないものもテレビ界隈では非常に多く見受けられます。

 

一応PCモニターで近いものといえばINNOCNの32M2Vだと思います。

カタログスペック的に共通点が多く価格面でも近いものがあります。実際私もこれとどちらを買うかで悩みました。

 

PCへ接続

それでは初期設定を済ませて実際にPCに接続してみます。

※この記事はRadeonのビデオカード(7900XTX)を使用して話を進めています。

操作はリモコン

テレビの操作は基本的にリモコンで全て行います。

テレビなので当たり前なのですがPCユーザー的には比較的珍しいリモコンの存在。
モニター本体に手を伸ばさなくて良いのは楽ちんです。

QM8Bのリモコンは今時のテレビらしく多数のボタンを備えています。
ただそのせいかボタンが狭い範囲に並びすぎていてブラインドで操作すると押し間違ってしまう事も。

真ん中の白いボタンを長押ししながら喋れば音声検索が可能です。

 

キーマウも一応対応

USB接続で一応キーボードマウスにも対応します。

リモコンのみよりも少し操作性は向上しますが、PCのような快適さを期待してはいけません。

クリックを受け付けないものがあったり受け付けないキーがあったり色々制限があります。

 

スピーカーは15W+15W

今回購入した50QM8Bでは背面のONKYO製サブウーファーが省略されています。

Amazonのページを見ると55インチを購入したレビューでサブウーファーの写真を載せている方が居るのでこの購入情報が正しければ最小最安の50インチのみ省略されているという事になります。

それ抜きでもPCモニターによくある申し訳程度の内臓スピーカーと比べれば全然良質なので、特別音に拘らない人ならば実用に足るレベルだと感じます。

逆にこだわる人はサブウーファーがあろうがなかろうがサウンドバーを導入するべきな気もします。

PCから音声出力も可能

なおPC側のサウンド環境にある程度自信があれば光デジタルケーブル経由でテレビの音を鳴らす事も可能です。

サウンドカードと光デジタルケーブルさえあればあとは持ち前のPCスピーカーから良い音を鳴らしてやりましょう。

ポイント

後述しますがネトフリやディズニープラスなどをより良い画質で楽しむためにはテレビ側の機能での視聴がオススメです。

テレビ側で視聴するとなるとテレビ内臓スピーカーに頼るかサウンドバーを用意するか迫られます。

テレビ内臓に頼る場合、PCのサウンド環境がテレビ内臓を上回っていると「画質をとれば音室が下がる」事にモヤモヤするかもしれません。

サウンドバーを用意すれば解決しますが高価なのと、PCのサウンド環境とダブらせるか破棄して一本化を迫られる事になります。

なので既に構築済みのPCサウンド環境への一本化が出来るのがこの選択肢の強みになります。

リフレッシュレート144hz

まず普通に接続してそのままだとWindowsのディスプレイ設定で120hzまでしか選べません。

Radeonソフトウェア(AMD Software: Adrenalin Edition)のディスプレイの設定からカスタム解像度を作成します。

 

すると144hzが選択可能になりました。

ただしHDMIケーブルは2.1対応の48Gbps帯域を持つものを使う事が前提となります。

ゲームマスター

QM8BはAMD FreeSync Premium Proに対応していますがRadeonソフトウェアで確認するとAMD FreeSyncの項目がサポートされていませんと表示されています。

 

何も知らずに見ると焦ってしまうところですがAMD FreeSyncはテレビ側の設定でゲームマスターをONにする事で有効になります。

 

ゲームマスターをONにするとRadeonソフトウェアでVRRの項目が現れます。

SDRでVRRをオンにした状態がAMD FreeSync Premiumです。

この状態でWindowsのHDRをON(Windowsキー+Alt+B)にすればAMD FreeSync Premium Proに切り替わります。

ただしVRRを有効にするとテレビ側の画質設定が制限されてしまいます。
VRR無効状態でHDRを有効にすると画質設定で映画視聴向きのIMAXが選択可能なので用途によって切り替えるのがよさそうです。

※プリセットが固定されるだけで輝度や色合いなど細かな調整はVRR+HDR中でも可能です。

 

個人的な使い分けとしては以下。

  SDRモード HDRモード
ゲームマスターオフ デスクトップ作業向き
輝度を40~50に抑える
動画視聴向き
ゲームマスターオン HDR非対応ゲーム向き? HDR対応ゲーム向き
輝度100で明るさ満喫

VRRオンのSDRはHDR非対応ゲーム用と捉えても良いですが、非対応ゲームでもHDRモードに切り替えて疑似HDRの明るさを体験するのも良いかもしれません。Windowsキー+Alt+Bで簡単に切り替えられるのでタイトルや見え方のお好みで選ぶと良い感じでしょうか。

HDRやゲームマスターの切り替えで画質設定のプリセットも勝手に切り替わるので一度設定しておけば輝度はいちいち弄る必要がありません。

 

動画視聴

動画の視聴は基本VRRオフのHDRモードで行います。

認定こそありませんが明るさ極限は1,499ニットと表示されます。

どのモードでも視聴自体は可能ですがVRRオンではオフと動画(ネットフリックスのスパイダーマン ノーウェイホーム)で見比べた時に
主観的に画面全体が白っぽく感じました。画像は貼れませんが。

HDRをオンにしておく事でネットフリックスの対応作品やYoutubeの対応動画をHDR映像で視聴する事ができます。

ネトフリでHDRと表示されたら4KかつHDR対応である証。

 

YoutubeのHDR映像Morocco。
直撮り画像では伝えきれませんが太陽などの強い光源が映ると目を細めたくなるほどの眩しさを感じます。

 

PCでは4K非対応コンテンツがある

ただしDisney+は残念ながら現状PCでの4K視聴に対応していません。

またネットフリックスも4K画質の視聴には「PCに接続中の全てのモニターが4Kに対応している」という条件があります。
フルHDやWQHD、ウルトラワイドなどの4Kモニターが他に接続されている場合4Kでの視聴ができなくなります。

PCからだとHDにしかならないDisney+。画質は雲泥の差だ。

画質はテレビ出力の方が良い?

更にネトフリはこの条件を満たしていてもPCよりもテレビで視聴した方が明らかに画質が良くなります。
(私の環境下での主観的確認ですが間違いないと確信しています。)
なおこの画質差はむしろ4K非対応作品の方がより顕著です。

 

実際に一つ例をあげて見比べてみます。
下の画像2枚はHD画質(非4K)の鬼滅の刃、柱稽古編第2話の速水さんのアップのシーンを直撮りしたものです。

PC出力

TV出力

PC出力では明暗のグラデーションがブロック状にくっきり浮き出てしまっていますが、TV出力ではそれがかなり抑えられています。
この差はTVの画質調整機能をいくら弄っても埋める事ができませんでした。

ウィンドウモードで見たいなど画質を気にしない使い方をしない限りはGoogle TVである事を活かしてTV側の機能で動画を見た方が良い画質で楽しむ事ができると思います。

倍速補完はPC出力にも効く

今時のテレビが備える倍速補完機能はテレビ側の出力にのみ適用される感じでした。

モーションクリアをONにして30fpsの同じ映像を見比べてもPCの映像とテレビ側の出力とでは差があり、PC側は全く滑らかになっていないように見えます。

ファーストインプレッションで「PC出力に倍速補完は使えない」と勘違いしてしまいました。

しかしおそらくは「144hzでは倍速補完で映像を挟み込む余地がなくなる」というのが正解のようで、
Windowsのディスプレイ設定で60hzに落とせばPC出力の映像もテレビの倍速補完機能を効かせる事に成功。

これを使えばRadeonの旧Fluid Motion Framesを用いなくともPC上の動画視聴をヌルヌルにする事ができます。

ただし倍速補完の(当然の)副作用として入力遅延が爆上がりします。
新Fluid Motion Framesのようにゲーム用途で実用に足るものではありません。
あくまで動画を滑らかにする事を目的にのみ使える機能と考えるべきでしょう。

倍速補完でヌルヌルにしたければ映像設定からモーションクリアをオンにしよう。

その上でPC出力の場合はWindowsのディスプレイ設定を60hz以下に落とせば良い。

ゲームプレイ

ゲームプレイではゲームマスター(VRR)をオンにしてWindows11のHDRを有効にします。

HDRオフならFreeSync Premium、オンならPremium Proと表示される。

 

Horizon Forbidden West。HDR対応タイトルでは色の鮮やかさや明るい部分の眩しさが際立つ。

The First Descendant。こちらもHDR対応タイトル。

ASTRONEER。HDR非対応ゲームでも太陽を見ると眩しさを感じる事ができる。

Phasmophobia。暗すぎて視認性が厳しいゲームだが、ゲーム内の明るさ設定100%でもかなり見える。

 

HDRありなし

HDRのオンとオフをSTAR WARS ジェダイ:フォールン・オーダーで見比べてみます。

HDRオン

HDRオフ

全体に色の鮮やかさや明暗のメリハリではっきり差が出ていると感じます。

 

Mini LEDのハロー現象

Mini LEDのネガティブな特徴であるハロー現象を真っ暗な画面に映るゲームの字幕やアイコンで確認します。

ほぼ正面から捉えたPhasmophobiaの字幕。文字の周囲も淡く光っていると感じます。
ついでに右上に映るMSI Afterburnerのオーバーレイ周りも同様です。

やはり黒背景に字幕を表示するような状況では多少のハロー現象が見てとれます。

 

まとめ:量子ドットMini LEDで没入感最優先なら

というわけでPCモニターとして見た場合のQM8Bの良し悪しを挙げていきます。

まずは良い点。

QM8Bの良い点

  • 量子ドットMini LED
  • 大型の4KモニターでフルHD4枚分のウィンドウ分割表示が可能
  • リフレッシュレート最大144hzのVRR対応
  • コントラスト比6000:1
  • 最大輝度1300nitsのHDR性能
  • 貴重なAMD FreeSync Premium Pro対応
  • HDRオン時にも画質調整が可能
  • 倍速補完で動画視聴をぬるぬるにできる
  • PCモニターが追いつけない50インチ以上の圧倒的没入感
  • テレビ側の機能で4K映像視聴(Disney+)も安心対応
  • ウルトラワイドから移行しても21:9コンテンツのサイズで見劣りしない
  • 性能の割に価格がとても安い

前述の通りPCモニターとして欲しい機能が盛り込まれています。

デスクトップ作業はPC用の4Kモニターならば4分割したら小さすぎになるところですが50QM8Bでも25インチ相当のフルHD4枚分にあたるので十分使用に耐えます。

ウルトラワイドモニターから脱却したい場合にはPCモニターの4K32インチなどにした場合21:9の映画を視聴する際には迫力で劣ってしまう懸念がありますが、QM8Bならば上下をカットしてなお一般的なウルトラワイドモニター(21:9の34インチや40インチ)よりも大きく映す事ができます。

 

次に微妙な点です。

大前提としてこれはあくまでテレビであってPCモニターではないので
PCモニターなら当たり前な機能がテレビには無かったりします。

QM8Bの微妙な点

  • 接続は基本HDMIのみでDPが無い
  • USB Type-Cも無い
  • VAパネルゆえの視野角の狭さ
  • スタンバイが無いのでPC起動時に自動で映像が点いたりしない
  • デカさゆえ競技性の高いゲームには不向き
  • ほぼグレアパネルでノングレア派にはやや厳しい反射
  • 4KなのでゲーミングにおいてはPCスペックの要求値が高くなる。

スタンバイはつけっぱ勢にはあまり気にならないでしょうがPC起動時に必ずリモコンも操作する必要が出てきます。

映り込みはテレビである以上ある程度覚悟が要る部分だと思います。絶対アンチグレア派にとってはかなり気になるかもしれません。

 

とはいえ量子ドット+mini LEDなどの最新技術も含め機能の充実するPCモニターとして非常にコスパの高い製品だと感じました。

大画面ならではの迫力あるHDR映像を動画やゲームで体験してみたい場合には価格も込みで有力な選択肢になりそうです。

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